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群馬を照らす声と笑顔 ― ムーちゃん 青柳美保さんの挑戦

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群馬に、静かに灯りをともす人がいる。

“ムーちゃん”——その愛称で親しまれる青柳美保さんだ。

前橋のイベントの司会。
地域密着ラジオのパーソナリティ。
上毛かるたの発信者。
カフェオーナー。
そして企業ユニフォームのプロデュース。

並べれば華やかな肩書きだが、彼女の軸は驚くほど静かだ。

「頼まれたら断れないんです」

そう微笑むその奥にあるのは、
“誰かの挑戦を支えたい”という、ぶれない意思である。

代打から始まった、23年の声

大学卒業後、彼女は群馬テレビに入社した。
だが配属はアナウンス室ではない。編成部だった。

番組編成、番宣制作、ラテ版作成、原稿執筆。
光の当たらない場所で、番組の骨組みを支えていた。

転機は退職のとき。

「司会をやってみないか」

先輩からの一言に、即座に首を横に振った。
「無理です」と。

それでも背中を押され、結婚式やイベントの司会を経験する。

代打の司会からご縁いただいた前橋花火のアナウンスの仕事

ラジオもまた、同じだった。

「アナウンサーじゃないから無理」

そう言いながら、試験放送にアシスタントとして参加。
名乗らぬまま“ムーちゃん”として電波に乗った声は、開局以来15年リスナーさんに届いている。

「ラジオは、応援できる場所なんです」

彼女は“仕事”を選んだのではない。
“役割”を選び続けてきた。

100円レシピが、人生を動かす

転機は、またしても偶然を装ってやってきた。

ラジオで紹介された「1人100円おもてなし料理コンテスト」。

泥付きの下仁田ネギ。
豚こま肉。
甘辛味噌ダレ。

焼きまんじゅうを思わせる一皿は、最優秀賞を射止める。

料理教室。
そして、カフェ開業。

だが、理想と現実のあいだには深い溝があった。
利益は出ない。給料も払えない。

そこで生まれたのが「焼きまんじゅうマフィン」だ。
郷土の味噌ダレを洋菓子へと昇華させる。

1000人試食グランプリ。

しかし法人化を決意した瞬間、世の中は止まった。
コロナ禍である。

「辛抱の連続でした。でもね、周りが“うまくいってるよね”って思ってくれていたら、それが大成功なんです」

苦労を物語にしない。
それもまた、彼女の矜持だ。

“ムーちゃん”という距離感

その愛称は、入社当時に「ムーミンに似ている」と言われたことから始まった。

学生時代は“みんく”。
呼び名は変わっても、距離は変わらない。

「誰でも、その人の素晴らしさを尊敬したい」

子どもも、高齢者も、障がいのある人も。
彼女の声が柔らかいのは、思想が柔らかいからだ。

上毛かるたに宿る、郷土の記憶

20代の頃、彼女は群馬テレビに一本の企画書を出している。
「上毛かるた旅めぐり」という5分番組。

採用はされなかった。
だが、想いは消えなかった。

ラジオを持ったとき、再び芽吹く。

44枚の札を、一枚ずつ。
5年続く番組となった。

「継続って、本当にすごい」

大人の上毛かるた大会を運営する

一般社団法人KING OF JMKの渡邉代表への感謝を口にする姿は、どこまでも誠実だ。

群馬を語るとは、群馬を愛すること。
彼女はそれを、静かに続けている。

前に出ないという覚悟

「私は継続。若い人を守るのが仕事」

医師、オペラ歌手、FP、若手奏者、ヤングケアラー支援番組——
次々と立ち上がる新番組。

自分が話すのではない。
“話せる人の場”をつくる。

「潤滑油でいたいんです」

目立たない。
だが、止まらせない。

それが彼女の役割だ。

そして、“幹”

華やかな枝葉の裏に、一本の幹がある。

ユニフォーム事業。

家業は婦人服小売業。
家業が倒産したその日、彼女は取引先企業へ向かった。

「私が継続します」

だが現実は非情だ。
「法人でなければ契約できない」

3年間、間借りでつなぐ。
法人化と同時に正式契約。しかも制服リニューアルと同時だった。

「首の皮一枚、でした」

汚れを防ぐためのものだけではない。
企業の思想を、纏うものだ。

この幹があるからこそ、枝葉は伸びる。
支える覚悟が、ここにある。

群馬に、灯りをともす。

彼女は前に立つ人ではない。
前に立つ人を照らす人だ。

派閥に属さず、声を荒げず、
それでも確かに、群馬を明るくしている。

“ムーちゃん”と呼ばれる距離感のまま。

【青柳美保さんプロフィール】
大学の食物学科を卒業後、地方テレビ局へ就職。
退社後、フリーの司会者となり、現在はまえばしCITYエフエムのパーソナリティやイベントMCなどで活躍。
自他共に認める食いしん坊で日々美味しいものを探求中。
2015年に「前橋おもてなし料理コンテスト」で最優秀賞、2019年には考案した『焼きまんじゅうマフィン』で
「美味しいまえばし再発見!お土産コンテスト」でグランプリ受賞。
2018年から前橋のまちなかに「創業カフェ・ムーちゃん」2020年に焼きまんじゅうマフィンの製造拠点校と
カフェ『MOO CAFE』を住吉町にオープン。
https://moo-factory.com/cafe/

編集後記

本号もお読みいただき、誠にありがとうございました。

取材を通して改めて感じるのは、群馬には静かに情熱を燃やす人がいるということです。その存在こそが、地域の未来をつくっています。

私たちはこれからも地域の声に耳を傾け、丁寧に言葉を紡いでまいります。そして今後は情報ぐんまとの共創も視野に入れ、群馬を明るくしていく取り組みにも力を注いでいきたいと考えております。

伝えるだけでなく、つなぐ存在へ。

皆さまとともに、群馬のこれからを描いていけましたら幸いです。

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