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「足袋のまち行田、次なる一歩へ──地域資源をつなぐ伝統産業の未来戦略」

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(市・企業・市民が織りなす“足袋文化ルネサンス”のかたち)

足袋といえば、行田。
かつて全国の足袋の約8割を生産し、200を超える足袋商店が軒を連ねたこのまちは、
いま、改めて「足袋のまち」としての存在価値を問い直しています。
令和元年には「行田足袋」が経済産業大臣指定の伝統的工芸品に、さらに日本遺産「和装文化の足元を支え続ける足袋蔵のまち行田」
の構成資産にも認定され、文化的・経済的な意義が再評価されています。
しかし、生活スタイルの変化、後継者不足、そして足袋に触れる機会の減少——
その現実を前に、行田市は企業や組合と連携し、産業・文化・観光を横断する取り組みを展開し始めています。
本稿では、イサミ足袋をはじめとした地元企業の歩み、市の戦略、そして足袋文化を未来へつなぐための具体的な展望について紹介します。
次の百年に向けて、今まさに“次の一歩”を踏み出そうとしている行田の姿が、そこにありました。

1.地域資源と足袋文化の臨時
行田市における「足袋」はどのような文化的・経済的な意味を持っていますか?伝統産業を協議した観光やブランディングの解決には、どのような事例がありますか?
⇒ 行田市の足袋産業は昭和初期に最盛期を迎え、市内に200社以上の足袋商店が共存する全国有数の生産地でありました。令和元年には「行田足袋」として経済産業大臣指定伝統的工芸品に指定され、文化庁が認定する日本遺産「和装文化の足元を支え続ける足袋蔵のまち行田」の構成資産として足袋蔵と共に指定されるなど、本市における伝統産業として、大きな文化的・経済的価値を持っています。
 観光の観点からは、市内(本社等)に販売店舗(ショップ)を構えたり、自社工場を一般公開するほか、地域DMOである一般社団法人行田おもてなし観光局と連携したガイドツアー(現在終了)を実施する者もいます。また、かつて足袋産業を支えた金融機関である旧忍町信用組合店舗が「ヴェールカフェ」として生まれ変わるなど、足袋関連の文化財の活用も進んでいます。

2.行田市としての支援・連携の取り組み
イサミ足袋をはじめとした地元企業とどのような連携・支援を行っていますか?市外・県外への発信や若い世代への継承についての課題と可能性をどう見ていますか?
⇒ 市としては主に足袋製造事業者6社(イサミ足袋含む)により構成される「行田足袋組合」の事務局として、足袋産業及び各事業者との連携・支援を行っています。令和7年度においては、経済産業省「伝統的工芸品産業支援補助金」を活用し、足袋産業の活性化及び行田足袋ブランドの認知拡大への取り組みを実施(予定)しています。
 市外・県外への発信については、東京ビッグサイトで開催される「インバウンド向けグッズEXPO(ライフスタイルWeek内)」や全国の工芸品の展示施設である「CoCoJAPAN」などへの出展を通し、インバウンドをはじめ、これまでとは異なる市場への進出に向けた情報発信を積極的に行っています。
若年層への継承については、足袋への「親しみやすさ」を提案していくことが求めると考えます。現代においては、足袋=和装の固定概念の定着により、生活的側面より文化的側面が印象強く見られ、足袋に馴染みのない方がほとんどです。そこで近年は、足袋へのハードルを下げ、より現代のライフスタイルにも馴染むよう、カラフルな「柄足袋」や「半足袋(ショート足袋)」「ヨガ足袋」「ランニング足袋」などの商品が多数誕生していますので、伝統的工芸品としての歴史・文化を継承しつつ、日常的に足袋を履いてもらうという新たなライフスタイルを提案していければと考えております。

3.わたしの展望
今度、足袋産業や行田の地域資源をどう相談して、育てていこうとお考えですか?「都市として実現したい未来像」があれば教えてください
⇒ 行田足袋による地域ブランディングを一層強化したいと考えております。
古くから「足袋といえば行田」と親しまれてきましたが、現在足袋製造事業者と地域との結びつきは希薄しており、足袋を見て触れることのできるような機会(コンテンツ)も不足していることから、産地における「足袋離れ」が進行していると言わざるを得ない状況です。
 上記への解決策の一つとして、本年度には「行田足袋着用推進事業」を実施予定です。本事業は市内で行田足袋を履く店舗を「行田足袋着用店舗」として市と組合が認証するもので、足袋は組合より無償提供いたします。併せて、行田足袋のファッションショー「行田足袋コレクション2025」も開催予定です。行田足袋と地域との結びつきを深めながら、魅力的な産地の育成に注力して参ります。
また、本市には忍城址、さきたま古墳群、古代蓮の里(行田タワー)をはじめとする観光スポットのほか、スリッパ産業などの地場産業といったその他地域資源も豊富にございます。足袋産業を軸として、それらの地域資源=点を線で結び、地域一体となった循環的な「産業ツーリズム」を造成できればと考えています。

お話しを伺ったのは
横森大悟様
行田市役所環境経済部商工観光課 主事
新卒入庁3年目。主に創業支援や地場産業支援など商工業振興に関する業務を行っています。
行田足袋およびイサミ足袋とは、足袋事業者6社で構成される「行田足袋組合」の事務局として携わっています。

編集後記

「行田足袋」は、ただの製品名ではなく、このまちが積み重ねてきた時間と営みそのものです。
今回、行政・企業・観光・住民をまたいだ連携が少しずつ形になりつつあることに、大きな希望を感じました。
足袋が「懐かしいもの」から「使いたいもの」「見せたいもの」へと変わる兆し——
そこには、過去と未来をつなぐ知恵と工夫が確かに息づいていました。
取材後、私自身も改めて白足袋を手に取り、その履き心地と造りの精巧さに感動しました。
足袋を履くことは、日本の文化に一歩、足を踏み入れることなのだと感じています。
今後、足袋を履いたまま地域を歩き、まちの歴史や文化と出会えるような観光・体験コンテンツがもっと増えていけば、
きっとこのまちの“百年の足音”は、さらに豊かに響いていくはずです。

「歩いて知る、行田の足音──足袋と城とゼリーフライ」
取材の前後には、行田のまちを実際に歩きました。
歴史ある足袋蔵を眺めながら、まちのシンボル・忍城にも足を運び、その凛とした佇まいに行田の誇りと風格を感じました。
そしてもう一つのお楽しみ、名物「ゼリーフライ」もいただきました。
名前のインパクトとは裏腹に、素朴でやさしい味わい。揚げたてを頬張りながら、「こうした食文化もまた、
足袋と同じように土地の記憶をつないでいるのだな」としみじみ思いました。
足袋、城、郷土食——すべてが“地に足のついた文化”として、行田の暮らしと誇りを支え続けている。
そんなことを実感できた、かけがえのない取材時間でした。

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