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おためしオープンアトリエ#2開催!
廃墟はアート!そしてワクワクする未来に続く!

群馬県みなかみ町の水上温泉で、空き家となっていたかっての社員寮「旧ひがき寮」の本格活用にむけた実験プログラムの第二弾
「おためしオープンアトリエ#2」が7/24(木)、7/25(金)、7/26(土)の3日間に渡り開催されました。
独特な建ち方と佇まいで、南欧の路地裏のような風景が印象的な「旧ひがき寮」は、約1年前から「まるごとアトリエプロジェクト」
と題して、アート・ものづくり・クラフト・アップサイクルなどをテーマにした温泉街の新しい拠点づくりを目指しています。
併行して、住民の方々や関心を持っている有志の方々、そして産官学金まちづくり(みなかみ町・オープンハウスグループ・群馬銀行・東京大学)
のメンバーが協力し、少しずつDIY改修を進めています。手作りゆえ途中段階ですが、その再生過程も含めて「おためしオープンアトリエ#2」を開きました。
今回は秋以降のひがき寮再生への本格再生に向けた、「おためしオープンアトリエ#2」と題し、7人の“創り手”の皆さんがアトリエを設け、
そのアトリエを公開し、参加型のプログラムを提供しました。
同プログラムの“創り手”の櫻井園子さんと、産官学金まちづくりのメンバーの東京大学大学院の代表の林明侑奈(みゆな)さんにお話を伺いしました。



櫻井園子さんにお聞きしました。
■プロジェクト立ち上げについて
1.この「みなかみ廃墟再生プロジェクト」を立ち上げたきっかけや背景を教えてください。
立ち上げのメンバーではありませんが、東大の研究室、オープンハウスさん、群馬銀行さん等による町の社会実験として始まったプロジェクトで、
そこに参加させていただきました。
学生さんたちが廃墟同然で草ぼうぼうだったところを、草刈から初めてDIYでキレイにしてくれました。
一度マルシェが開催され、その時から一出店者として携わっています。
今回のオープンアトリエというプロジェクトは、学生さんたちが中心になって主導していただく中、
私たちアーティストも企画会議からチームに入いり、コンセプトやコラボ企画の意見を出しながら一緒に作ってきました。
2.初めて現地を訪れたとき、どんな印象を受けましたか?
(個人的に)私の作風は退廃美がテーマで、本業のイベントの仕事はお化け屋敷を制作しているので、怪しげな雰囲気の場所は、非常に心に刺さりました。
3.この場所の「廃墟」という要素に、どんな価値や可能性を感じましたか?
ライフラインや床もシートを敷かないと使えなかったり、本当にボロボロの状態だったので、そこはキレイに直しつつ、
何十年もかけてできた質感や、古い感じは敢えて残して、キレイにし過ぎずにこの現状を生かし、快適な場所として作っていきたいと思います。
■コンセプトと想い
4.「再編」や「再発見」ではない、「再生」という言葉を選ばれた理由は?
ネーミングは携わっていませんが、(個人的に)みなかみ町は30年くらい前から遊びに来ていた場所で、
かって賑やかだった町を知っているので、バブルがはじけて寂れた町の様はとてもやるせなさを感じます。
そこから私たちの世代や学生さんたちの手で、また新しい夢を再生していくことがこのプロジェクトのコンセプトです。
廃墟をまっさらにして全く新しいものを作るのではなく、今もある歴史の面影を大事にしながら、新しく蘇らせるという意味を感じるネーミングです。
5.このプロジェクトを通じて、どんな社会的・文化的なメッセージを伝えたいと考えていますか?
ここでアーティストとして活動していると、移住して来た方や生まれも育ちもみなかみ町の方など、
色々な角度でみなかみ町を知っている方たちが集っているので、みなかみ町から色々な活動を世界に発信できたら嬉しいです。
(個人としても)世界観が自分の作風ともマッチする場所なので、創作意欲がかきたてられてよりデープな作品が作れそうです。
■地域との関わり
6.みなかみ町や地元の方々とはどのように連携・協力されていますか?
今回は夏休み期間だったので、地元の小中学校にチラシの配布をお願いして、これからのみなかみ町を背負っていく子どもたちに向けてピーアールしました。
ゆくゆくは子どもたちや、これからみなかみ町を創る世代と一緒に町を盛り上げる活動をしたいと思います。
昔を知る現役世代もこの廃墟再生プロジェクトとともに、ノスタルジックな懐かしい思い出を共有し、一緒に新しいものをつくる活動ができたらいいですね。
7.外部からのアーティストやクリエイターの参加が地域にもたらす影響について、どのようにお考えですか?
私もみなかみ町に完全に住んでいないので、傍から見たら外部のアーティストだと思いますが、もちろん外部の方も大歓迎です。
現状、みなかみ町で活動している方から、人伝いで色んな方が繋がっています。
みなかみ町は最近移住してくる方が多くて(私のように)二拠点生活をしている人もいます。
みなかみ町を色んな角度で見つめその方の經驗を生かすことは、町で暮らす人たちもすごく喜んでくれるので、
ぜひ、新しい取り組みやみなかみ町になかったことを教えていただきたいと思います。
■アート・クリエイティブとの融合について
8.廃墟という非日常空間にアートやパフォーマンスを持ち込むことの意義は?
全く新しい空間で何かものづくりをするのではなくて、歴史を踏まえたうえでものづくりをしていくのが重要です。
みなかみ町の温泉街の昔の風景を知っている人は懐かしい気持ちで見てもらい、知らない人もこんな素敵な場所があることを知ってもらえばより、
町の人たちと一緒に町づくりが楽しめると思います。
9.参加クリエイターの選定基準や、重視している表現テーマはありますか?
厳しい審査はありません。
募集期間内に応募することと、出店だけでなく、プロジェクトの一員として一緒に廃墟再生プロジェクトに興味をもっていただきたいと思います。
取組に興味をもって、アーティスト同士のコラボ企画とかも一緒に考え、参加するのが条件になります。
今回も、夏が終われば捨ててしまう団扇を使って、各々のブースを巡りオリジナルの団扇を作るワークショップは、
アーティスト同士の話し合いの中から生まれました。
■今後の展望
10.今後、このプロジェクトをどのように発展させていきたいと考えてきますか?
今年は、5月、7月24・25・26日(今回)と、10月は11日12日13日の開催予定に向けて、主催の東大チームと話し合っています。
来年以降は常設の場所として、アーティストが常駐して発信活動をしていく場所を目指します。
また、金銭面やアーテイストとのつながり、集客など現実的なところにも目を向け、より楽しいクリエイティブな場所にするため話し合っています。
11.ほかの地域の廃墟や空き施設の活用にも展開していく構想はありますか?
現状、携っている廃墟再生化プロジェクトはみなかみ町限定になります。(個人としては)廃墟同然になってしまった場所は沢山あると思います。
それをほおっておくのはもったいないと思うので、自分が携われるなら、この経験を生かして色んな所の取組に参加してみたです。
全国でこの輪が広がったら面白いですね。



■来場者・参加者へのメッセージ
12.来場者にはこの空間をどう味わってほしいですか?
(個人的には)廃墟映えという言葉をはやらせたいです。
ボロボロで汚いなどネガティブに捉えられがちなキーワードですが、みなかみ町が栄えていた歴史やすたれた歴史があり、
再生させようという今がある場所なので、歴史が作ってきた質感や建物も楽しんで、写真を撮ったり、展示物を見たりして、
こういう歴史があったことに想いを馳せてもらいたいです。色んなアーティストさんの活動もあり、出店者の皆さんはそれぞれ再生がテーマの作品もあるので、それとリンクするところに目を向けてもらいたいです。
13.初めて「廃墟」という場所に足を踏み入れる人に伝えたいことは?
廃墟は肝試しをするイメージがあります。
みなかみ町も無断で古い旅館に肝試しをしに入った例がありますが、このイベントを通して来場していただき、
建物の細かいところまで観察してみてください。壁のボロボロ具合や人が住んでいたことに想像を巡らせるのも面白いと思います。
まるで美術館や博物館にいくような、また、お祖母ちゃんの家に遊びに行くような気軽な感覚を持てるかも知れません。

林 明侑奈(みゆな)さんにお聞きしました。
■今回のプロジェクトでどういう立場として携わっていますか?
みなかみ町で取り組んでいるのがまるごとアトリエプロジェクトというプロジェクト団体で、その団体、学生、地域の人が連携して立ち上げています。
去年、私と今年卒業した先輩が立ち上げたプロジェクトで、リーダーを務めています。
学生側の中心人物は3名ぐらい、地域の方々、“創り手”として今回出店されている方々を含めて十数人でまるごとアトリエプロジェクトとして活動しています。
■今回このプロジェクトに携わるきっかけ・理由は?
元々はホテルの社員寮で草も伸び切っていて、若干廃墟化ぐらいの空き家でしたが、建物の形状がすごい面白いと話題になりました。
プロジェクトに入って間もなく先輩方が、温泉街から近くてアクセスもいいので、残していきたいと話し合い、
東一棟と呼んでいる部屋の中を土間打ちして、壁や天井を壊しDIYをして、将来的には貸し出したり、常時開放することを目指して、今活動しています。
■実際手掛けてみてどうでしたか?
屋外の作業なので、冬は寒く夏は暑くて大変だと思いました。
何と言っても冬は雪掻きから始まります(笑)地域の方と同じ立場でプロジェクトを実行するために現場に迎いますが、
東京から来るのは大変でした。地域の方も忙しいので、思うようにいかない時もあり、DIYをするのも大変でした。でも楽しいのでやりがいを感じます。
■そんな苦労とかあって実際こういう形になってみて感想はどうですか?
まだまだ途中ですが、今回のようなイベントを開催して、沢山の人が来場してワークショップを体験してもらうと嬉しいです。
今後もこういう取り組みをしていって、メディアの方に広めていただいたり、興味を示して出店者として参加してくれる方がいたりと、
どんどん輪が広がっていくのが嬉しいです。
■ここで体験しているプロジェクトはご本人の将来的な進路に生かせると考えていますか?
来年、ゼネコン関係の企業へ就職しますが、(ゼネコン関係で)信頼関係を築くためには対人コミュニケーションがすごく大事です。
このプロジェクトに携わることで地域の方々とも係わり、コミュニケーション能力を身につけて将来に生かしていきたいと思います。










-オープンアトリエ-
創り手#1 | sa9raisonoko(櫻井園子)/eS. @sa9raisonoko
創り手#2 | 桑原早恵樹/SAEKI KOBO @mato_omi_saedon
創り手#3 | akiko/天然地球素材-earth100% @earth100per
創り手#4 |simarie工房/シマリエ @simarie_koubou
創り手#5 |のほほんイラストレーター SaoRin︎⭐︎ @sacchu0719
創り手#6 |mArinO(堀内 茉莉乃) @marino_hmno
創り手#7 |共愛COCO,児浦ゼミ @kyoaicoco
-飲食-
飲食出店者#1|スナック之の団子屋 @ocha.dango3
飲食出店者#2|Yujuカンパニー @yujucompany.kitchen
-コラボワークショップ-
創り手と飲食出店者によるコラボワークショップを開催予定
-まちづくりワークショップ-
旧ひがき寮も含めたみなかみ街全体の未来について考えるワークショップを開催予定
-まちづくり関連展示-
旧ひがき寮や廃墟再生マルシェを中心としたこれまでの活動展示
■主催/旧ひがき寮まるごとアトリエプロジェクト
■協力/みなかみ町・株式会社群馬銀行・株式会社オープンハウスグループ・東京大学大学院都市デザイン研究室
【林明侑奈(はやしみゆな)プロフィール】

東京大学大学院新領域創成科学研究科所属、修士二年生 建築系専攻

櫻井園子(さくらい・そのこ)|現代魔女アーティスト / eS.代表
俳優・MC・キャンドルアーティスト・カラーセラピスト
神奈川県逗子市出身・横浜市在住。舞台芸術学院演劇部本科卒。
演劇・映像・MCなど表現活動を展開するなか、難病や大切な人との別れを経験し「魂を癒す表現」を求めて2015年よりキャンドル制作を開始。
“退廃美”をテーマに、ブランド**eS.(エス)**としてアート作品・空間演出・ワークショップ・古美術のセレクト販売などを手がける。
2019年、合同会社エスを設立。イベントプロデュースやキャスティング業も展開。
コロナ禍以降は、縁深い群馬県みなかみ町と横浜の二拠点で活動中。
取得資格:JCA認定キャンドルアーティスト・インストラクター、古物商、AEAJアロマ検定1級、TCマスターカラーセラピスト、認定心理士
https://sa9raisonoko.themedia.jp/
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【編集後記】
取材の合間に、私も各ブースを巡りながら「廃材団扇」づくりに挑戦。
色とりどりの素材や装飾を選び、アーティストの方と会話しながら仕上げていく時間は、まるで旅先でひとつの物語を紡ぐような感覚でした。
完成した団扇は、持ち帰ってからも水上温泉の夏の風や、旧ひがき寮の独特な空気感を思い出させてくれます。
廃墟の再生は、ただの修復ではなく、人と人、過去と未来をつなぐ創造的なプロセス――そう感じた取材でした。


