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「群馬には、まだ広く知られていない魅力がたくさんあります。だからこそ、大きな可能性を秘めている県だと思うんです」
そう語るのは、群馬県太田市出身の放送作家・岐部昌幸さん。「シューイチ」や「秘密のケンミンSHOW 極」など、数々の人気テレビ番組の企画・構成を手掛け、現在は群馬と東京の二拠点で生活しています。
全国に誇れる文化や観光地、食、企業など、群馬には魅力的なものが数多くあります。
その一方で、「これも群馬発だったんだ!」と驚かれる商品や企業、県民にとっては当たり前でも、外から見ることで改めて気づく魅力も少なくありません。
メディアの仕事や2拠点生活を通して見えてきた、群馬の強みとは――。
今回のインタビューでは、上毛かるたや群馬パスポートをはじめ、地域の魅力を生かすヒントや、これからの群馬への期待、そして新しいことに挑戦する若い世代への思いまで、たっぷりとお話を伺いました。


上毛かるたを、次の80年へ
群馬の歴史や文化を詠んだ上毛かるたは、子どもの頃から親しまれ、今も子どもたちの大会が盛んに行われるなど、県民に深く根付いた存在です。近年は、大人の大会「KING OF JMK」も募集開始直後に定員に達するほどの人気を集め、世代を超えた広がりを見せています。
「来年は上毛かるた誕生 80 周年。これは大きなチャンスだと思います」
多くの県民が利用している群馬パスポートのヒットにも触れながら、岐部さんが重視するのは、イベントのあとに続く「次の仕掛け」です。
「群馬県民って、自分もまさにそうなんですが……熱しやすく冷めやすいところがありませんか(笑)。
イベントも、大きな花火を打ち上げて終わりではなく、そこから次の動きにつながる仕組みまで考えられると、なおいいですよね」
上毛かるたでいえば、札にゆかりのある場所を巡るスタンプラリーや現地限定のアイテム、企業対抗戦、群馬ゆかりの芸能人チームとの対戦企画などです。
その中でも、すでに企画書にして提案したことがあるというのが、「芸能人チーム」対「群馬県民チーム」の上毛かるたのスペシャルマッチ。
群馬出身の著名人を中心に結成された「上州鶴の会」には、中山秀征さんや井森美幸さんをはじめ、多くの著名人が名を連ね、近年では櫻井翔さんの入会も話題となりました。
そうしたメンバーらが各地区の県民チームと対戦し、群馬テレビやインターネットで発信する――という構想です。
ちなみに、お昼はみんなで登利平。「スポンサーさん、いませんか?(笑)」と岐部さん。
「皆さん、本当に故郷・群馬への思いが強いんです。『群馬のために』と一肌脱いでくれる方も多いと思います。
上毛かるたは、世代や地域を超えて、県民が一つになれるもの。
他県にはなかなかない、群馬ならではの文化であり、エンターテインメントとして、もっと発信していけると思います」
80 周年を一度の記念イベントで終わらせず、その先の盛り上がりへどうつなげていくか。岐部さんが見据えているのは、上毛かるたの「次の 80 年」です。



群馬には、もっと知られていいものがある
「群馬って、実は全国区の商品や企業がすごく多いんです」
例えば、ガトーフェスタ ハラダ、サッポロ一番、ペヤングソースやきそば、ヤマダデンキ、豆腐メーカーの相模屋食料など。
さらに、メガネの JINS、カラオケのまねきねこ、たこ焼きチェーンの築地・銀だこも群馬から生まれたブランド。
ビックカメラも創業者は群馬県出身です。
「こうして並べてみると、すごいですよね。でも、『これも群馬だったんだ』と驚かれることが多い。
これだけ全国に知られたものがあるのに、それが群馬のイメージにつながっていないのは、やっぱりもったいないと思います」
商品や企業だけではありません。数字で見ると全国トップクラスなのに、意外と知られていないものもあります。
「例えば、梅の収穫量は全国 2 位で東日本1位、カリカリ梅は群馬が発祥。枝豆の出荷量も全国2 位です。
梅は和歌山県の印象が圧倒的に強いですし、枝豆も群馬のイメージはそれほどないですよね。これだけ上位なのに、あまり知られていないものが結構あるんです」
そうした中で話題に出たのが、群馬県で生まれたりんごの品種「ぐんま名月」。
県外では「名月」と表記して販売されることもあると聞き、岐部さんは驚きます。
「『ぐんま名月』なのに、“ぐんま”を取って売られている。なんとも群馬らしい哀愁を感じます(笑)。
もちろん、残念に思う県民もいると思います。
でも、そこを逆手に取って、時にはユーモアも交えながら、『これ、実は群馬生まれなんですよ』とアピールしていくのもアリなんじゃないかなと」岐部さん自身、番組づくりの中で、ネガティブに捉えられがちな群馬のイメージを逆手に取った企画を考えたことがあるといいます。
「以前、全国最高気温を叩き出した群馬の“暑さ”を逆手に取って、『南国ライフを楽しむ県民』という切り口でテレビで特集したことがあるんです。
夏の伊香保を盛り上げるハワイアンイベントに、前橋のバナナや太田のマンゴーなど、群馬ならではの“南国感”を感じるものをいろいろ取り上げました。“暑い=大変そう”ではなく、“暑い=なんだか楽しそうだぞ?”と思ってもらえるような企画にしたんです。
すごく反響がありました。ネガティブに捉えられがちなイメージも、切り口を変えれば、その土地の見え方を変えられると思うんです」
外から見えてきた、群馬の暮らしやすさ
「外から群馬を見るようになって、気づいた魅力もたくさんあります」
現在、群馬と東京の二拠点で暮らす岐部さん。その中で改めて感じるのが、“住む場所”としての群馬の魅力です。
東京へのアクセスが良く、自然や温泉、食にも恵まれている。さらに、生活コストの低さも大きな強みです。
総務省の 2024 年の調査では、群馬県の物価水準は全国で最も低く、東京都とはおよそ8%の差がありました。
そして今、群馬は移住先としても注目されています。
2025 年の「移住希望地ランキング」では、窓口相談部門で 2 年連続全国 1 位となりました。
「とくに高崎は、これからさらに“選ばれる街”になっていくと思います」
実際、群馬へ移住する人も増えています。さらに、都内への通勤を続けながら高崎市や前橋市に住むことを検討するなど、“暮らす場所”として群馬を選ぶ動きが広がっています。
「実際に東京と群馬を行き来していると、群馬って良い意味で“ちょうどいい”んですよね。
都市としての便利さがありながら、自然やレジャー施設、温泉などが身近にある。あと、お店の駐車場も広くて停めやすい(笑)。
そういう日々のちょっとした便利さも、実際に暮らすと結構大きいんです。これから住む場所として、もっと注目されていくと思います」
“群馬だからこそ”生まれるものを
最後に、群馬で新しいことに挑戦する若い世代へ、メッセージを聞きました。
「今は、スマホ一つあれば、群馬にいながら全国、世界へ発信できる時代です。
実際、群馬から発信したものが大きく広がっている例もありますよね」
その一人が、群馬県出身の動画クリエイター・バヤシさん。料理動画を中心に、世界的な人気を集めています。
また、群馬そのものを題材にしたゲーム『ぐんまのやぼう』も、地元をユニークな発想でコンテンツにした代表例です。
「群馬の中では当たり前のことでも、見方を変えるとすごく面白いネタになったりするんです。
焼きまんじゅう、からっ風、起立・注目・礼、みそにぎり、……どれも、他県の人からとてもびっくりされます。
そんな身近なところから『なにか面白くできないかな?』と考えてみる。そうしたものが、それ自体コンテンツになることもあると思うんです」
岐部さん自身、最近は群馬から何かを発信したい、起業して新しいことを始めたいという若い人に出会うことも増えたといいます。
「今は、アイデアを実現するための選択肢が本当に増えています。
せっかく群馬で何かを始めるなら、地元にあるものを自分なりの視点で見つけて、新しい形にしてほしい。
『群馬だからできること』
『群馬だから生まれるもの』を、どんどん形にしていってほしいですね」
【編集後記】
「群馬はもったいない。」
インタビューの中で何度も飛び出した言葉です。しかし、それは決してネガティブな意味ではありません。
裏を返せば、それだけ伸びしろがあるということ。
全国に誇れる文化、食、自然、企業、そして人。群馬には、まだ知られていない魅力が数えきれないほど眠っています。
誰かが一歩を踏み出せば、その後ろに続く人が現れる――。
岐部さんの言葉は、まさに群馬の未来そのものを語っているようでした。
群馬の可能性は、まだ始まったばかりなのかもしれません。