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【特集】リップル洋品店から「ezu(エズ)」へ。桐生から世界へ紡ぐ、わたしらしくいられる服の絵図

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群馬県桐生市を拠点に、18年間にわたり独自の衣服を提案し続けてきた「RIPPLE(リップル)洋品店」が2024年、大きな転換期を迎えました。新会社として法人化し、ブランド名を「ezu(エズ)」へとリブランディング。

大量生産・大量消費の現代において、あえて非効率な「手仕事」や「手染め」にこだわり、毎月1日〜7日のみアトリエを開くという独自のスタイルを貫く彼ら。今回の法人化とリブランディングの仕掛け人である平岡氏を通じ、デザイナー・岩野久美子氏の言葉で、新ブランドに込めた覚悟とこれからのビジョンをじっくりと伺いました。

「リップル洋品店」から「ezu」へ——リブランディングの理由

ーー RIPPLE洋品店として18年の歴史を積み重ねてきた中での、今回のリブランディング。その最大の理由やきっかけは何でしょうか?

岩野久美子氏(以下、岩野): RIPPLE(リップル)は「さざ波」という意味で、小さな波紋が広がっていくような感覚でものづくりをしてきた時間でした。その18年の中で、香港、ニューヨーク、パリのコレクションに服を持っていく機会もいただきました。国を越えても、手仕事のあたたかさは伝わるんだということを、自分の身体で確かめた時間でもありました。

その積み重ねの中で、自分の内側で何かが固まってきた感覚があります。RIPPLEという名前への愛着はありながら、これから先に描きたい絵は、もっと別のものになっていくんだろうという確信が生まれていました。

ezuというのは「絵図」という意味です。完成した地図ではなくて、歩きながら描いていく途中の絵。正解がわからなくても、自分の感性を信じながら描き続ける。そういう姿勢の表明として、この名前にしました。法人化も同じで、この思想を次の時間軸にちゃんと持続させていくための「器」として選んだことです。

ーー 「絵図」という言葉に込められた意味を、もう少し詳しく教えてください。

岩野: 「絵図」という言葉には、地図とも設計図とも少し違う「余白」があると思っています。地図は正解のある場所へ導くもの。設計図は完成形が決まっているもの。でも絵図は、描きながら変わっていく。

私のものづくりも、最初から答えがあるわけじゃないんです。素材と出会って、職人さんの手と重なって、その日の光の中で色が生まれて……そういう「制御しきれないもの」の積み重ねが一着になる。ezuという名前は、そういう自分のものづくりの在り方そのものだと感じています。

「わたしらしくいられる服」の本質

ーー 新しいコンセプトとして「わたしらしくいられる服」を掲げられています。これは具体的にどのような状態を指しているのでしょうか。

岩野: 私自身、かつては社会が求める「普通」という枠に馴染めなくて、ずっと違和感を抱えながら生きてきた時期がありました。だから、服を通じて誰かが「自分はこれでいいんだ」と思える瞬間を届けたい、という気持ちが、ものづくりの一番根っこにあります。

「わたしらしくいられる」というのは、変わることじゃないんです。その人の中にもともとあるものが、服を通じて静かに立ち上がってくる。そういう状態のことだと思っています。

以前、試着をされたお客様が涙を流されたことがありました。「新しい自分に会えた」とおっしゃっていて。でも私はその言葉を聞きながら、新しい自分というより「忘れていた自分に会えた」のではないかと思いました。服は人を変えるためのものではなくて、その人がすでに持っているものを「思い出す」ための装置だと信じているからです。

ーー 大量生産の服とは異なる、ezuの服だからこそ提供できる「心の変化」や「体験」とは何でしょうか?

岩野: 「洗うたびに、また違う感じになるんです。体になじむ感じがする」と言ってくださるお客様がいます。「皮膚みたいになってくる」という言葉をいただいたこともあります。

大量生産の服は、買った時点で完成しています。でもezuの服は、手に取ったところから関係が始まる。着るたびに変化して、その人だけの表情になっていく。お客様の中には、自宅に「ezu専用のラック」を作ってくださっている方もいて、それを聞いた時にとても嬉しかったです。

服というものが、その人の日常にとってのお守りのような存在になっていく。そういう時間のためにつくっています。

ヴィンテージの編み機や手染めにこだわり続ける理由

ーー 今でも効率化とは対極にある、ヴィンテージの編み機や手染めにこだわり続ける理由はどこにありますか?

岩野: 籠染めは、同じ染料・同じ職人・同じ手順でも、その日の温度や湿度、素材の状態によって色が変わります。その「制御しきれない揺らぎ」の中にしか宿らないものがある、というのが私の確信です。

赤の中に無限のグラデーションがあって、青が十着あれば十通りの表情がある。その一着一着の違いこそが、着る人の個性と共鳴すると思っています。

4歳の頃から、紙で服を作って紙の人形に着せる遊びをしていました。デザインも洋裁も独学で続けてきて、あの頃からずっと、手で何かを作ることへの感覚は変わっていないと思います。揺らぎの中にしか生まれないものを、これからも大切にしていきたいです。

ーー 繊維の街・桐生という土地で、地元の職人さんたちと共創することの意義をどう捉えていますか。

岩野: 桐生には1300年の織物文化があります。この土地に職人さんたちがいて、その手仕事があるから、ezuの服が生まれている。「桐生製だから良い」というのとは少し違くて、この土地で、私と職人さんたちの手と感性が重なるから成り立っているものだと思っています。

縫い手の津久井さんは、ezuの複雑なものづくりについて「60になっても成長するんだなと思った」とおっしゃっていました。職人さんが「面白い」と感じながら仕事をしてくださっている。その関係性の中から、世界のどこにも存在しない一着が生まれます。

毎月1日〜7日のみ開くアトリエ、そして日常へ広がる思想

ーー 毎月、月初の1日〜7日のみアトリエをオープンするという独特のスタイルを継続されているのはなぜでしょうか。

岩野: 「わざわざ来てくださる方の時間を、大切にしたい」というのが一番の理由です。いつでも来られる場所より、この7日間を選んで来てくださったご縁を、丁寧に扱いたい。来られた方とじっくり対話して、その人に合った一着を一緒に見つけていく。そういう時間のためにアトリエを開けています。営業日を増やせば売上は増えるかもしれないけれど、それよりも大切にしていることがある、ということです。

ーー 今月のアトリエの見どころや、これからの新しい取り組みについて教えてください。

岩野: 今月のアトリエには、服だけでなく、「ezu coffee」も並んでいます。豆の仕入れから、一粒一粒のピッキング、焙煎、梱包まで、丁寧に時間をかけてつくっています。通常より長い時間をかけて焙煎するのは、豆の奥に眠っている甘さを、静かに引き出すためです。「余白のためのコーヒー」という言葉が、私の中にはあります。

「ezu soap」や「ezu salt」も、今まさに職人さんや現地の方たちと丁寧にプロジェクトを進めているところです。服と同じように、日常のどんな場面にもezuの思想が宿るものをつくっていきたいと思っています。

ーー 最後に、「情報ぐんま」の読者へメッセージをお願いします。

岩野: 群馬という土地で、世界に通じるものができると信じながら、ずっとものづくりをしてきました。桐生の職人さんたちの手と、この土地の空気と、私の感性が重なって生まれているものが、アトリエにあります。

遠くから来てくださる方もたくさんいる中で、地元の方々にこそ、ぜひ一度足を運んでいただけたら嬉しいです。言葉で説明するより、袖を通していただく方が、ずっと早く伝わるものがあります。アトリエで会いましょう。

【編集後記】

「買った時が完成形」の大量生産品に対し、ezuの服は「手にした瞬間から、着る人と服との関係性が始まる」という言葉が深く胸に刺さりました。RIPPLEからezu(絵図)へのリブランディングは、単なる名称の変更ではなく、彼らがこれまで培ってきた「手仕事の温もり」を、より強固な思想として次世代へ、そして世界へと持続させていくための美しい決意表明です。

服だけに留まらず、コーヒーや石鹸、塩へと広がる「ezuの思想」。毎月1日から7日間にだけ開かれる桐生のアトリエには、私たちが日々の生活で忘れかけている「自分らしさを思い出すための余白」が、静かに、確かに用意されています。言葉を越えて身体に馴染むその一着に、ぜひ会いに行ってみてください。(情報ぐんま編集部)

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