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共愛学園前橋国際大学 兼本先生に聞く、地域共創と若者の力

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「伴走」が育む地域の未来

2003年の試験運用から約20年。共愛学園前橋国際大学の看板授業「バーチャルカンパニー(VC)」は、今や学生が地域企業を巻き込み、実社会の経済を学ぶ多様な活動へと成長しました 。立ち上げから現在まで学生を支え続ける兼本先生にお話を伺いました 。

  • バーチャルカンパニー(VC)の「伴走者」として

―VCが始まって20年。学生たちが「大きく成長する」のはどのような瞬間でしょうか?

兼本先生: やはり「現実の壁」にぶつかった時です 。VCでは2013年までHP作成や電子商取引の疑似体験を主眼としていましたが、2014年以降は「商品開発とSNSでの情報発信」へと形を変えてきました。授業レベルでは、商品開発というツールを使って試行錯誤することが中心ですが、より実践的なゼミ活動(繭美蚕など)では、自分たちのアイデアが社会に通用しない悔しさを味わい、そこから「どうすれば届くか」を本気で考え抜いた時、学生の目つきが変わります 。

例えば、ある商品(ぷっちーずたると)が全く売れなかった際、ゼミ生たちが「なぜ売れないのか」を死ぬほど検証し、その反省をバネに開発した新商品(雪ぽんクランチ)が大きな売上を記録したことがありました 。この「執着」に近い熱量が、学生を大きく変えるのです。

―先生が「伴走(アカンパニスト)」する上で大切にされていることは?

兼本先生: 私は経済学が専門で、当初は商品開発や経営の専門家ではありませんでした 。だからこそ「教える」というよりは「一緒に考える」という手段しかなかった。学生が実践することから私自身も学び、社会経験の長さから先に気づいたことをアドバイスとして還元する。それが私のスタイルです。

何より重要視しているのは「教員が決めない」こと。決定権は常に学生に与えます 。自分たちで決定するプロセスを通ることで、行動に責任が生まれ、活動が「他人事」から「自分事」へと変わるのです 。

  • 継承される想いと社会的な使命

―VC発の取り組みが、授業の枠を超えて継続している例もありますね。

兼本先生: 通常、授業としてのVCは1年で完結しますが、学生の意識次第では2年継続する事例もあります。さらに授業の枠を超え、学生の意思と企業の支えによって発展しているのが「燈(ともしび)」というプロジェクトです 。

例えば「湯浴み着(ゆあみぎ)」を通じて多様な温泉文化を追求する活動も、後輩へ継承する仕組みを学生自らが作りました 。彼らが「自分たちがやらないと、この想いが途絶えてしまう」という強い使命感を持った時、活動は継続性に変わります。まだ学生たちは在学中ですが、こうした想いが社会に根付いていく様子は非常に感慨深いです 。

―社会的な活動が長く愛されるために必要なことは?

兼本先生: 指導する立場としては「商品開発はあくまでツール」であると考えています 。その背後にあるアントレプレナーシップ(起業家精神)や、「社会をどう良くしたいか」という哲学が核になければなりません 。ゼミ活動のように学生自らが考え、動き続ける場において、この哲学がブレないからこそ、一過性のイベントに終わらない継続性が生まれるのです 。

地域連携と「伝統」の新しい形

―「地域の伝統」を現代のビジネスに昇華させる視点について。

兼本先生: 「面白がる力」ですね 。「上毛かるた」も、それを単なる古い遊びとして置くのではなく、現代の空間に馴染むインテリアにしたり、SNSでの「聖地巡礼」のフックにしたりと、今の世代の遊び場に変換する視点が重要です 。これはVCの枠組みを超えた、地域共創全般に言えることかもしれません。

―「情報ぐんま」のようなメディアが地域共生にできる協力とは?

兼本先生: 「発信力」と「翻訳」です 。良いものを作っても、届かなければ意味がありません 。メディアが地域のリアルな情報を足で稼ぎ、一次情報を発信し続けることは、地域共生の大きな助けになります 。大学、企業、メディアが「競争」ではなく「共創」する。群馬の未開の地や、まだ知らていない面白い価値を、これからも一緒に形にしていければと思います 。

編集後記】

兼本先生の「若気の至りで始めた」という裏話から始まったVCは、今や群馬のビジネスシーンに欠かせない人材を輩出する場となっています。「情報ぐんま」もまた、その「伴走」の精神を受け継ぎ、地域と人を繋ぐ翻訳者として歩みを進めてまいります。

キーワード:アントレプレナーシップ教育 単なる商売の仕方を教えるのではなく、自ら課題を見つけ、周囲を巻き込み、解決していく力を育てること。

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