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「私、昔から“おとぎの国”の住人でいたいって思ってるんです」
そう語るのは、「おとぎの森カフェ」オーナーの小島あゆみさん。
お客様やスタッフからは親しみを込めて“あっくん”“あゆちゃん”と呼ばれています。



木のぬくもりと動物たちがそっと息づく絵本のような店内。
グルテンフリーの米粉パンケーキやランチは、アレルギーを持つ子どもたちでも安心して食べられるよう工夫されています。
そんな“おとぎの世界”をもっとたくさんの人に届けたい——あっくんの新たな挑戦が、今始まろうとしています。



おとぎの森カフェ開業のきっかけ
子どもたちの笑顔と「作る楽しさ」から始まった夢
「料理がもともと大好きだったんです。そして、子どもも大好きで。
自分の子どもが4人いるんですけど、誕生日や季節のイベントごとに、ちょっと凝ったケーキや料理を作って楽しんでいたんです。」
おとぎの森の店主が語る“はじまり”は、家族のために作る料理でした。子どもたちの笑顔に励まされ、作る楽しさがどんどんふくらんでいくうちに、周囲の人から「これ、もっと多くの人に見てもらったほうがいいよ」「お店やったら?」と声をかけられるようになったそうです。
「でも最初は、あくまで身近な人との楽しみだったので、お店をやるなんて現実的じゃないって思っていました。」
それでも一歩を踏み出そうと、まずは料理教室を開いてみることに。参加者も徐々に増え、「自分の料理が人を笑顔にできる」という実感が手応えへと変わっていきました。
さらに転機となったのが、ある保育園の園長先生との出会いでした。
「『うちの保育園の子どもたちにも、かわいくて凝ったおやつを作ってほしい』と声をかけてもらったんです。それがきっかけで、保育園のおやつづくりを始めました。気づけばもう6年目になります。」
保育園での経験が、自信とスキルをさらに深め、夢への思いを加速させていきました。
「私は、特定のものだけじゃなくて、その人や場に合わせた“いろんなもの”を作るのが好きなんです。だから“パン屋さん”ではなく、“カフェ”という形にしました。カフェなら、何でもできるかなって思って。」
夢は昔から持っていた“自分のお店を持つこと”。保育園での活動や料理教室の経験を重ねていくなかで、「お店をやりたい」と周囲にも口にするようになっていた頃、思いがけず今の物件に出会います。
「『あの場所、空くみたいだよ』って聞いて見に行ったら、その日に『やります!』って即決してました(笑)。」
もちろん、子どもが4人いて(そのうち大学生が2人、小学生が2人)、経済的な不安もありました。それでも夢を叶える気持ちが勝ちました。
「怖さはあったけれど、『やってみたい』という思いが強かった。だから思い切ってチャレンジしてみることにしたんです。」
そうして始まった「おとぎの森カフェ」は、店主の“好き”と“夢”が詰まった、温かくてちょっと特別な空間になりました。



お店の世界観について
「おとぎの森」— 絵本の中に迷い込んだような、癒しとワクワクの空間を。
お店の世界観は、まるで絵本から飛び出してきたような“非日常”の世界。木のぬくもりや自然を感じる空間に、「ほっ」と癒される。でも同時に、どこか心がくすぐられるようなちょっとしたワクワク感も感じられる——そんな場所を目指しています。
「私は“おとぎの国”の住人でいたいんです。だから普段から、まるでおとぎ話の登場人物のような格好をしています。休みの日も、私自身が“おとぎの森”から出てきたようなイメージを大切にしています。」
店内にはウサギやリスなど、物語に出てくるような動物たちがそっと顔をのぞかせます。実際にご自宅でもウサギを飼っているそうで、ウサギはお店の大切なキャラクターでもあります。お皿や飾り、料理の盛り付けにもウサギのモチーフがあしらわれ、おとぎの世界観をより一層引き立てています。
「他のお店ではやっていないようなことをしたくて。ランチプレートやパンケーキも、一つひとつ丁寧に、盛りだくさんに仕上げています。スタッフは大変かもしれないけれど、それによって一つの“世界”が完成するんです。」
写真を撮って“映える”だけでなく、女の子たちの「かわいい!」という笑顔や、初めて来た人の驚きや感動。それらすべてが、「おとぎの森」という物語を形づくっています。
「いつ来ても、何度来ても、“物語の続きを見たくなる”ような。そんな世界観を、これからもずっと大事にしていきたいですね。」



パンケーキや料理に込めた「米粉」へのこだわり
グルテンフリーでも“おいしい”をあきらめない
おとぎの森で提供しているパンケーキやパン、ランチメニューにはすべて米粉を使用しています。お店自体がグルテンフリーを掲げており、誰もが安心しておいしく食べられることを大切にしています。
「もともと保育園で働いていたこともあって、アレルギーのある子どもたちと日々接していました。実は自分の子どもにも食物アレルギーがあって、“誰でも安心して食べられるもの”を作りたいという思いがずっとあったんです。」
そこでたどり着いたのが「米粉」でした。お米はアレルゲンになることがほとんどなく、日本人にとってもなじみ深い素材。だからこそ、毎日口にするものとして選ぶ価値があると感じたといいます。
「米粉って、実は使い方や焼き方によっては小麦よりももっちりした食感になったり、ふわっと仕上がるんです。手間はかかるけれど、その分おいしさの幅も広がる。だからパンケーキもランチも、米粉を使った“おとぎの森ならではの味”を楽しんでもらいたいですね。」
おいしくて、かわいくて、安心して食べられる。
そんな料理たちが、今日もおとぎの森でお客様を迎えています。



今後の展開について
「おとぎの森」をもっと多くの人のもとへ
「これからは、このお店だけにとどまらず、もっとたくさんの人に“おとぎの森”の商品を届けていきたいと思っています。」
キッチンカーの導入も決定して、近々稼働予定。今後はマルシェやイベントにも積極的に出店し、より多くの方に「おとぎの森」の世界観や味を知ってもらうことを目指しています。
「県外のイベントにもどんどん出ていきたいし、いずれはもう少し規模を大きくして、自分のお店を“最初から作る”という夢もあります。」
現在のお店は賃貸物件ですが、将来的には自分で設計した、より世界観にこだわった空間を持ちたいと考えているそうです。
「ジブリのように、誰もがワクワクして、誰からも愛される場所。そんな“物語のあるお店”を作っていきたいんです。」
設備や環境を整えながらも、「おとぎの森」の魅力である温もりやワクワク感、そして癒しの空気感は決して失わない。
それが、店主が描くこれからの「おとぎの森」のかたちです。
おとぎの森カフェ
https://otoginomori-cafe.hp.peraichi.com
https://www.instagram.com/otoginomori.cafe/

【編集後記】
「おとぎの森」をつくるのは、料理でもインテリアでもなく、人の“やさしさ”と“想い”。
あっくんが心を込めて生み出す世界観は、訪れた人の心にそっと魔法をかけてくれます。
もっと遠くへ、もっとたくさんの笑顔へ。
あっくんの物語は、これからも続いていきます——まるで絵本の1ページのように。