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ザスパ群馬が仕掛ける、新しいファンづくり

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スーパーで、街なかで、ファッションで。

細貝萌 株式会社ザスパ(ザスパ群馬)代表取締役社長が語る「試合の日だけではないクラブ」の存在価値

サッカークラブのファンは、どこで生まれるのだろう。

スタジアムで試合を観戦したとき。選手の活躍に心を動かされたとき。もちろん、それも大切なきっかけだ。

しかし、そもそもクラブの存在を知らなければ、応援するきっかけさえ生まれない。

スーパーで商品を手に取ったとき、街を歩いてエンブレムを見かけたとき、あるいはファッションブランドの商品に興味を持ったとき。サッカーとは直接関係のない日常の中にも、新しいファンとの出会いは隠れている。

ザスパ群馬の細貝萌社長が目指しているのは、そんな日常の中にクラブが自然と存在する風景だ。

ベイシアグループとの連携、ファッションブランド「DENHAM」とのコラボレーション、そして群馬県内のプロスポーツチームとの交流。そこには、単に試合へ観客を呼び込むだけではない、クラブの認知を広げるためのさまざまな試みがある。

今回のインタビューでは、今シーズンのチーム状況やJ2復帰への思いに加え、地域に根付くクラブをつくるための考え方、そして社長として大切にしている姿勢について話を伺った。

ザスパ群馬は、どのようにして「サッカーファン以外」にも届く存在になろうとしているのか。

細貝社長の言葉から、その可能性を探る。


  1. 目指すのは「試合の日だけザスパ」ではない

――街に出ると、ザスパを応援する方の熱を感じる一方で、もっと街中にザスパがあってもいいのでは、という声もあります。

細貝社長:そこはザスパの大きな課題の一つだと思っています。僕がよく言っているのは、「暮らしに根付く」ということです。

例えば、ベイシアやカインズには、それぞれ地域の暮らしに根付いた存在感があります。ザスパも同じように、「暮らしの一部にザスパがある」「生活の中にザスパがある」という状態をつくっていきたい。

街を歩いていてエンブレムを見かける。ザスパンダを見かけて、「あっ、これサッカークラブのマスコットだよね」と思ってもらえる。そういう接点を少しずつ増やしていきたいと思っています。

前橋駅はもちろん、高崎など県内のいろいろな場所で、そうした動きについて少しずつ話を始めています。前橋市の小川あきら市長も非常に協力的ですし、これからさらに協力していただきながら、まずはザスパを知ってもらうことが大切だと思っています。

認知を広げる第一歩は、試合に来てもらうことではなく、まず存在を知ってもらうこと。

これは、ファンづくりを考えるうえで重要な視点だ。クラブを応援する人だけに向けて情報を発信していても、まだ関心を持っていない人との接点は生まれにくい。

日常の中でクラブを目にする機会を増やし、「ザスパって何だろう?」と思ってもらう。その小さな接点が、将来のファンにつながる可能性を持っている。

2.「かっこいいから着てみたい」も、ファンになる入口

――スポンサー企業との取り組みや、ファッションブランドとのコラボレーションも進めていますね。

細貝社長:プロサッカークラブなので、パートナー企業の存在は非常に大きいです。クラブの収入には、パートナー収入、グッズ収入、チケット収入という大きな柱があります。

ただ、スポンサーになっていただくのではなく、「ザスパ群馬って、こういうクラブなんだ」ということを知っていただき、その考えに共感していただいたうえでパートナーになっていただくことが大切だと思っています。

ファッションブランド「DENHAM」との取り組みも、その一つです。

「ザスパだからサッカーの服」というだけではなく、「これ、かっこいいから着てみよう」という入口ができる。実際に、県外から来た方が商品を見て、「これ、かっこいいね」というところからザスパを知ってくれたという話もあります。

サッカーファンだけをターゲットにするのではなく、「サッカーはよく知らないけど、このデザインは好き」という人にもザスパを知ってもらえる。それはすごく大事なことだと思います。

ここに、マーケティングの視点から見ても興味深いヒントがある。

商品を選ぶ理由は、人によって違う。サッカーが好きだから買う人もいれば、デザインが気に入ったから買う人もいる。そして、商品を通じてクラブを知り、そこから興味を持つ人もいる。

つまり、最初からサッカーを好きになってもらう必要はないのだ。

「サッカーが好きだからザスパを知る」だけでなく、「別のことが好きだからザスパを知る」。

ファッションは、そのための新しい入口になり得る。

ベイシアグループとの連携も同様だ。日常の買い物の中でクラブの公式マスコットや選手を目にすれば、これまで接点のなかった人にもザスパの存在が届く。こうした取り組みは、クラブの認知を日々の暮らしの中へ広げる試みといえる。

3.認知度を上げることは、選手の力にもなる

――認知度を上げることは、ファンを増やすだけではなく、チームにも影響しますか?

細貝社長:ものすごく大きいと思います。

僕自身、選手時代にたくさんのお客さんの前でプレーしてきました。日本代表では5万人の観客の前でプレーすることもありましたし、ドイツではホームゲームに7万人以上のお客さんが入ることもありました。

やっぱり、そういう環境でプレーすると、自分自身の力も出るんです。だから、今のザスパの選手たちにも、できるだけたくさんのお客さんの前でプレーしてほしい。

平均3,000人より5,000人。5,000人より1万人。観客が増えれば、スタジアムの雰囲気も変わります。

もちろん、観客が多ければ勝てるという単純な話ではありません。でも、ファンの声やスタジアムの熱量が選手に与えるパワーは、ものすごく大きいと思っています。

観客を増やすことは、チケット収入を増やすだけの話ではない。選手が力を発揮する環境をつくり、スタジアムの熱量を高めることにもつながる。

一方で、勝っているチームを観に行きたいと思うのは自然なことだ。結果が出なければ、ファンを増やすことも簡単ではない。

細貝社長は、勝つことでファンが増え、ファンの応援が選手の力となり、さらに勝利につながるという好循環をつくっていく必要があると語る。

そのためには、選手だけでなく、会社側もそれぞれの立場で努力しなければならない。

認知を広げる取り組みと、ピッチ上で結果を出すこと。両方がつながってこそ、クラブの成長につながる。

4.クレインサンダーズから学ぶ、街との接点

――群馬には、クレインサンダーズ、グリーンウイングス、ダイヤモンドペガサスなど、さまざまなプロスポーツがあります。

細貝社長:群馬クレインサンダーズさんから学ぶことは本当に多いです。

太田の街を歩くと、チームのフラッグやポスターなど、群馬クレインサンダーズさんを目にする機会が多い。「この街にはこのチームがある」ということを自然に感じられるんですよね。ザスパも、そういう存在にならなければいけないと思っています。

もちろん競技は違います。だからこそ、サッカーを見ている人がバスケットボールを見に行く。バスケットボールを見ている人がサッカーを見に来る。そういう交流もできると思います。

ザスパ群馬、群馬クレインサンダーズ、群馬グリーンウイングス、群馬ダイヤモンドペガサス。群馬のプロスポーツ全体で盛り上げていくことも大切です。

以前にも、複数のプロスポーツクラブが一緒になってイベントをしたことがありました。そうした取り組みを、また新しく生み出していけたら面白いと思っています。

ここでも、細貝社長が注目しているのは「街との接点」だ。

街なかでチームの旗やポスターを見かけることで、そのチームが地域に存在していることを実感できる。太田の街で見られる群馬クレインサンダーズの姿は、ザスパ群馬が目指す方向を考えるうえでも参考になるという。

さらに、競技の枠を越えてファンが行き来するようになれば、地域のスポーツ文化そのものが広がっていく可能性がある。

一つのチームだけでファンを増やそうとするのではなく、群馬のプロスポーツ全体で盛り上がる。そのための連携も、これからの地域スポーツに求められる視点だろう。

5.監督交代を経て、変わらない目標

――今シーズンは開幕から厳しいスタートとなりました。現在のチーム状況と、今季への意気込みを聞かせてください。

細貝社長:スタートとしては、皆さんご存じの通り、思うようにいかなかったと思っています。その中で、監督を交代せざるを得ない状況になってしまったことについては、本当に申し訳なく思っています。

ただ、今は新しい監督を迎え、ここから改めて勝ち点を積み重ねていく。「J2に復帰する」というクラブとしての目標は、まったくブレていません。

前監督の沖田優さんには感謝していますし、沖田さんが積み上げてくれたものもたくさんあります。特に攻撃面で積み上げてきたものは、必ずこの先に生きてくると思っています。

今回の監督交代を、これまで積み上げてきたものを否定することにはしたくない。これまでの積み重ねを生かしながら、新しいものを加えていく。そういう形で前に進んでいきたいと思っています。

監督交代は、チームにとって大きな転換点だ。しかし、細貝社長は、それまでの取り組みをすべて否定するのではなく、積み重ねを生かしながら前進する考えを示した。

クラブの目標はJ2復帰。その目標に向けて、ピッチ上の現場と会社側がそれぞれの役割を果たしていく。

地域に向けた認知拡大やファンづくりも、そうしたクラブの土台を支える取り組みの一つだ。

6.「叱られるうちが花」。応援してくれる人への恩返し

――最後に、ザスパを応援する群馬県民、そしてファンの皆さんにメッセージをお願いします。

細貝社長:ご存知の通り2024年にJ2からJ3に降格してしまいました。それまで長くJ2で戦ってきましたが、なかなか勝てない時期もありました。それでも応援し続けてくださった皆さんには、本当に感謝しかありません。

その皆さんへの一番の恩返しは、やっぱり結果だと思っています。J3からJ2へ。そして、その先はJ2からJ1へ。それが、皆さんに喜んでいただく一番の方法だと思っています。

僕自身も社長として、応援してくださる方から叱られることがあります。でも、それはクラブが表に出ているからこそだと思っています。

選手時代に日本代表にいたときは、一番応援された一方で、一番叩かれた経験もあります。気分がいいものではありません。でも、それだけ見てもらっているということでもある。

だから、僕は「叱られるうちが花」だと思っています。一番怖いのは、何も言われなくなること。「もういいや」と思われて、静かに離れていってしまうことです。

もちろん、できるだけそういう声が出ないように努力します。そして、結果で応えたいと思っています。

厳しい意見も、応援の声も、クラブに関心を持っているからこそ寄せられるもの。その言葉を受け止め、結果で応えるという細貝社長の姿勢からは、支えてくれる人たちへの責任感が伝わってくる。

ファンを増やすことも、地域との接点を増やすことも、最終的にはクラブを応援してくれる人たちに喜んでもらうための取り組みなのだろう。


編集後記|ザスパが「見える街」から、ザスパを「応援したくなる街」へ

今回の取材で印象に残ったのは、細貝社長が繰り返し語った「暮らしに根付く」という考え方だった。

マーケティングの視点から考えると、ファンづくりは、すでに関心を持っている人に情報を届けるだけでは完結しない。まだクラブを知らない人、サッカーに関心がない人との接点をどうつくるか。そこに、新しいファンを生み出す可能性がある。

スーパーでザスパンダを見かける。街なかでエンブレムに気づく。ファッションブランドとのコラボ商品を手に取る。こうした日常の小さな接点が、クラブを知るきっかけになる。

ただし、認知が広がれば、それだけでファンが増えるわけではない。興味を持ち、試合を観て、応援したいと思う。その先にある体験と、ピッチ上での結果が重要になる。

だからこそ、地域との接点をつくるフロントの仕事と、ピッチで戦う現場の仕事は、別々ではなく一つにつながっている。

群馬には、上毛かるたをはじめ、世代を越えて受け継がれてきた文化がある。また、競技の異なるプロスポーツチームも存在する。こうした地域の資源とザスパ群馬が交われば、サッカーだけでは出会えなかった人たちとの新しい接点も生まれるかもしれない。

ザスパが見える街から、ザスパを応援したくなる街へ。

その変化は、スタジアムの中だけでは起こらない。日常の中に小さな接点を増やし、一人ひとりがクラブを知るきっかけをつくることから始まる。

J2復帰という目標に向かう戦いとともに、ザスパ群馬が群馬の日常にどのように根付いていくのか。これからの取り組みに注目していきたい。

■ザスパ群馬HP:https://thespa.co.jp/

■細貝萌 株式会社ザスパ(ザスパ群馬)代表取締役社長OfficialSite:https://hajime-hosogai.net/

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